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塔の方から声がするとオソウジロボットたちは静かになって、ガラガラと音を立ててその方向を開けた。
そこには、塔を背に薄汚れた黒いマントに身を包む老婆が立っていた。流れるようにぬるりとこっちへ歩み寄ってくる。
腰が曲がっているせいで、背はひどく低く見え、すっぽりと被ったフードでしゃがんでいても顔が見えない。持っている杖は絵本で見た大昔の魔女と同じ枯れた木で出来た杖だった。その掠れて低い声は、かなこを震え上がらせた。
「もしかして……あなたが『破壊の魔女』?」
代々語り継がられる噂話の一つに、パイアンの塔には破壊の魔女が住む、というものがあった。そして、学園を破壊する隙をいつも伺ってると…
「そう呼ばれているようだね」
ふっと笑ったような声でそう言うと魔女は、杖をその風貌に似合わない素早さで動かし
かなこの胸に向けた。
「お前は選ばれしコドモのようだね。お前がこの腐った学園を救うんだよ」
「腐った……?救う……?」
かなこには意味がわからなかった。この平和な学園が腐っている?
確かに生徒はみんな孤児で、世間ではゴミ扱いを受けているが、それでもこの学園に流れる空気は穏やかで優しい、とても腐っているなんて言われるようなものではなかった。
「どういうこと?わたしはこれからどうなるの?」
魔女は、マントから右手を出すと
ゆっくりと拱いて、
塔の中へ消えていった。
かなこは、泥も消えたきれいなスニーカーで
塔の中へ踏み込んで行った……
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