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〝ネジの止まった〟っということは、この子は既に記憶を失っている状態を示していることでもある。
横に倒れた状態なのに、短い癖のある黄土色の髪の毛に似合う、赤茶色のキャスケット帽子をかぶっていた。
「どうしよう…シュルク…」
シュルクにも見えた。
カトレーナの抱える、ネジの付いた人を。
「や、やっぱりこのネジ…巻いてあげた方が良いのかしら」
そうカトレーナが言って、その男の子の背中にあるネジに手を伸ばそうとした瞬間。
「姫様、なりません」
シュルクに止められカトレーナには意味がわからなかった。
「どこの誰かも分からないこの男の子のネジを回したら、きっとこの子は目を覚まします。」
訝しげに尋ねる。
「だめなの…?」
「この子はまだ見た目からして幼い…。目を覚ました時、記憶の無い彼を誰が面倒みるのですか…?」
男の子は、見た目8歳ぐらいにみえる。
来るときには気づかなかった森の中。
薄暗い森の中。
彼は一人でいつから、ここに倒れていたのか…。
全てが謎だった。
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