第3章 キャスケット帽子の男の子

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シュルクがホッとした瞬間ーーー ーーーギリギリ…ギリギリ…ギリギリーー ネジを回す重たい音がした。 「ひ、姫様っ!!」 血相を変えてシュルクの両手はカトレーナの両肩にのせられる。 「何が責任よっ!!そんなの…私が…」 まだカトレーナはギリギリとネジを回す。 精一杯の力でしめあげるように。 「どんな重たくたって、背負うんだからぁぁぁーーー」 半分叫ぶぐらいの勢いでネジを巻き終えた。 「ひ…姫様…」 ゆっくり巻き上げたネジは、また反対方向にカタカタと軽い音をたてて回り出す。 「シュルク…この子が自分の記憶を望まない限り、私はこの子の姉になりますわ」 カトレーナの決断は生半可なものじゃないと、シュルクは思い知らされた。 こんな眉を切り上げて、真剣な眼差しを受けたのは、きっと初めてのことだった。 「……分かりました。」 「シュルクっ」 カトレーナの表情に笑顔が戻る。 「二人で、この子を守りましょう」 シュルクはカトレーナの左頬に顔を寄せて、ふっと微笑んでみせ、目を覚まそうとする男の子を見つめた。 その時、カトレーナの胸の中で、何か分からない、暖かい…心地良い感情が芽生えていた。 とくんっ…とくんっ… 胸に波打つ鼓動。 頬に広がる暖かい…少し熱い… そんな感情が…。
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