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ゆっくりだけど、何度か少年は瞬きを繰り返す。
長いまつ毛に透明な青い瞳。
ずっと見ていても飽きなかった。
「ボクは…アルフィー…」
やっと言葉を紡いだと思ったら自己紹介だった。
「八歳」
まだ少年の声は幼く、愛らしくも感じる。
「アルフィー…あなた、アルフィーと言うのね」
カトレーナはキラキラ瞳を輝かせた。
「アルフィーは、どうしてこんな所に倒れていたのかしら?」
カトレーナは、すぐさま質問をする。
「……わからない…」
アルフィーは、まだボーとする頭を頑張って動かそうとするけれど、今の自分の前の記憶が真っ白で、本当によく分からなかった。
「じゃ、じゃあ…あなたのお家はどこかしら?ご家族は?」
カトレーナは質問を変えてみるが
「分からない」
と、すぐに返答。
「分からない…分からない…分から…」
アルフィーが、小さな声で、聞き取るのが難しいくらい小さな声で呪文のように唱える。
「分から…ない…」
心配になって、シュルクも声をかける。
「大丈夫かっ?アルフィー…」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁーーー」
「!!?」
「!!?」
カトレーナとシュルクの二人は、突然のアルフィーの叫び声にびっくりした。
「分からない分からない分からないっ…」
少年の綺麗な瞳からは、光る雫がこぼれ落ちる。
「何にも、思い出せないよ…おねーちゃん…」
カトレーナの着ている、薄い草色のドレスに力いっぱいにすがりついてくる。
力いっぱい…
まだまだ幼い、こんな小さな手の拳で、必死にカトレーナのドレスに…
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