第4章 動き出した少年の歯車

4/4
前へ
/32ページ
次へ
どのくらいの時間をカトレーナの胸の中で泣いたのだろうか。 カトレーナもシュルクも、ただただどうしようもなく、このアルフィーという8歳の少年を頭を撫でながら、眺めることしかできなかった。 すっかり辺りは夕日でオレンジ色に染まってしまった。 「アルフィー…」 カトレーナが声をかける。 「………」 まだグズグズ泣いて鼻をすする音が聴こえる。 「姫様、日が暮れてきましたが寒くはないですか?」 後ろでシュルクはカトレーナにも気を配る。 「えぇ、心配はいらないわ。ありがとう、シュルク」 カトレーナとシュルクが会話をすると、アルフィーも口を開いた。 「ごめんなさい。ボクが泣いてるから、おねーちゃん達もお家に帰れないんだよね…」 カトレーナの胸から顔を離し、顔をあげずに震える手でカトレーナのドレスを掴みながら言った。 「よしよし。良いのよ、アルフィー」 それでもカトレーナはアルフィーの頭を優しく撫でるものだから、アルフィーは涙が止まらない。 「アルフィー?」 優しく問いかける。 「帰るお家も思い出せないのよね?」 「うん…」 か細い声で頷いた。 「私の弟になりなさいな。あなたと私は今日から一緒に暮らすのよ」 カトレーナはアルフィーを安心させようと笑ってみせた。 嬉しい言葉に、アルフィーはやっと顔を上にあげたが、表情はやはり曇っていた。 「ありがとう、おねーちゃん…」 まだ幼いはずなのに、とても切なそうな表情だった。 カトレーナの心にわだかまりを残したまま、3人はお城へ戻ることにしたのだ。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加