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どのくらいの時間をカトレーナの胸の中で泣いたのだろうか。
カトレーナもシュルクも、ただただどうしようもなく、このアルフィーという8歳の少年を頭を撫でながら、眺めることしかできなかった。
すっかり辺りは夕日でオレンジ色に染まってしまった。
「アルフィー…」
カトレーナが声をかける。
「………」
まだグズグズ泣いて鼻をすする音が聴こえる。
「姫様、日が暮れてきましたが寒くはないですか?」
後ろでシュルクはカトレーナにも気を配る。
「えぇ、心配はいらないわ。ありがとう、シュルク」
カトレーナとシュルクが会話をすると、アルフィーも口を開いた。
「ごめんなさい。ボクが泣いてるから、おねーちゃん達もお家に帰れないんだよね…」
カトレーナの胸から顔を離し、顔をあげずに震える手でカトレーナのドレスを掴みながら言った。
「よしよし。良いのよ、アルフィー」
それでもカトレーナはアルフィーの頭を優しく撫でるものだから、アルフィーは涙が止まらない。
「アルフィー?」
優しく問いかける。
「帰るお家も思い出せないのよね?」
「うん…」
か細い声で頷いた。
「私の弟になりなさいな。あなたと私は今日から一緒に暮らすのよ」
カトレーナはアルフィーを安心させようと笑ってみせた。
嬉しい言葉に、アルフィーはやっと顔を上にあげたが、表情はやはり曇っていた。
「ありがとう、おねーちゃん…」
まだ幼いはずなのに、とても切なそうな表情だった。
カトレーナの心にわだかまりを残したまま、3人はお城へ戻ることにしたのだ。
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