第5章 危険なアオレの実

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陽の差す芝生の生い茂る広い広い庭園の真ん中で、陽だまりのような暖かな明るい声が響く。 「アルフィー!!こっちよっ」 そう言って小さな少年へ両手を伸ばす。 「はぁぁぁーっ」 大人の頭ぐらいある大きな丸いゴムでできた球を、少年はカトレーナに向かって両手で思いっきり投げた。 芝生に何度かバウンドして、数メートル先に居るカトレーナの元へと渡った。 「上手ね、アルフィー」 カトレーナはくすくす笑う。 「私も投げるわよぉ」 そう言ってカトレーナも両手でアルフィーに向かって投げる。 「あっ…とっとっと…あぁーっ」 変な声をあげながらアルフィーは後ろへ転がってしまった球を追いかけていってしまった。 そんなやりとりが、かれこれ30分くらいは続いてるのであった。 「姫様っ」 カトレーナの後ろから声がした。 「あら、何かしら?貴方も一緒に遊びたいのかしら?」 そう言って振り返るとカトレーナの護衛のシュルクが立っていた。 「いえ、姫様、恐れ多い。そろそろ姫様のおっしゃられておりましたお時間でございますよ」 そう言って、時計を見せてくれる。 「あら、本当ね…うふふ。アルフィーを呼ぶわ」 カトレーナは笑みを見せる。 「アルフィー、アルフィー!!」 こちらへ球を抱えて戻ってくるアルフィーに大きく手を振って呼ぶ。 「なんですか?姫様…あ、じゃなくて、その…」 上手に息継ぎをしながら、おどおどとカトレーナに声をかける。 「うふふ」 優しく笑うカトレーナ。 「その…お…お姉…様」 照れながら上目遣いでカトレーナに向かう。 「あらアルフィー、様なんて付けなくてよろしいのに…」 残念そうにするけど、アルフィーにはこの呼び方が精一杯だった。 まだ幼いとはいえ、命の恩人であり、一国の姫に向かって、いくら要求されたからとはいえ『おねえちゃん』だなんて、とってもじゃないけれど、呼べなかった。
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