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「お姉様…きっと僕はこの国の者じゃなかったのですよ。じゃなきゃ、誰も皆、僕のことを知らないなんておかしすぎるじゃないかっ」
溜まっていたわだかまりと、涙が、同時に溢れ出す。
カトレーナは、それを受け止めることしかできない。
しかし、アルフィーの頭を撫でることはやめない。
すると、部屋の隅に立っていたシュルクが口を挟む。
「姫様。」
それに気付きカトレーナは応える。
「なにかしらシュルク」
「お言葉のようなことかもしれませぬが、先日…この城の書物を管理しているシャムナス殿がおっしゃっていたのですが…」
少しためらうシュルク。
「いいわ。続けなさいシュルク」
いつの間にかアルフィーもシュルクに体ごと向けて話に耳を傾けていた。
「はい。その、シャムナス殿から聞いたのですが、この国には禁断の果実というものが存在するらしいのです」
カトレーナの表情は強ばりゆっくりシュルクに近寄る。
「その、禁断の果実…とは、どういうことなのかしら…?」
後からアルフィーもカトレーナの後ろに付き、ドレスの裾を握っていた。
「その果実の名は『アオレの実』というらしいです。効果は…一度失ってしまった記憶をとりもどせると聞きました」
ひと光の話だった。
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