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「シュルク?」
かれこれ10分は待たされた。
カトレーナは口をあけた。
「そちらに収納されてある書物は、読んでもよろしいのかしら?」
カトレーナの掌が示す先をシュルクは見る。
「えと…」
何故だかシュルクは困っていた。
「ど、どうぞ…」
たじろいながら、カトレーナに勧めた。
カトレーナは、椅子から立ち上がり、本棚へと、埃にまみれた煉瓦の床を一歩一歩と蹴り、進んでいく。
なぜ、シュルクがためらったかというと、すぐに分かる。
その本棚の中の一冊…だいぶ黄ばんで綴り紐で簡単に閉じられた、しかし、大切に保管されてあるだろう、この書物。
カトレーナの細くて白い指は、紙をパラっと一枚捲った。
「……」
ゆっくり読み出すかと思いきや、いきなりバラバラバラーっと豪快にめくりだした。
そして…
「シュルクっ!!」
「はっ、はいっ姫様」
いきなり後ろに構えていたシュルクを呼び出した。
それに驚いたアルフィーも慌ててカトレーナに駆け寄った。
「わ…私の知る、文字では理解できませんわ…」
きちんと勉学に勤しんできた一国の姫様にとっては、とても衝撃的だった。
見たことも、触れたこともない、このミミズの這ったような文列。
シュルクは分かっていましたよーっという感じにやれやれと苦笑いを浮かべた。
すると、本棚の隙間を縫うように鈍い足音が近づいてくる。
シャムナスが戻ってきたようだった。
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