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「大変待たせましたなぁー」
そう言って全身白いと、イメージ付られた老人シャムナスがカトレーナ達の前に現れた。
カトレーナの目はすぐにシャムナスの両手に抱える書物をとらえた。
「シャムナスさん、そちらは…?」
ゆっくり書物からシャムナスの目へと顔を向ける。
「これは、禁断の果実の伝記が綴られております…禁断の書物です…」
誰も近づけさせないように、このお城の地下の書物庫の一番奥の暗い所に保管されていた。
つまり、これを拝見することさえ、禁断と言えよう…。
カトレーナの後ろに居たアルフィーは、トコトコと歩幅の狭い足取りでシャムナスに近づいた。
そして、シャムナスの着る長い薄汚れた藍色のローブの裾を引っ張ると、こう言った。
「そこに、僕の記憶を取り戻せるヒントが書いてあるのですか?」
誰もがこんな真面目な、真剣な眼差しをした幼い少年を、少年として見ることが難しく感じてしまう…
「アルフィー、私のスカートの裾は掴んでも良くてよ?けれどシャムナスさんの召し物を引っ張るのは失礼よ。一歩下がりなさいな」
カトレーナは、アルフィーを注意する。
しかし、シャムナスは
「この子か…」
「この、幼子が…記憶を失っておるのじゃな…なんて不憫な…」
シャムナスはそのままアルフィーの頭を撫でてあげた。
しわくちゃな老人の手。
けれど、ホッとする。
アルフィーはポロって、何か溜めてたものが瞳からこぼれ落ちた。
シャムナスはすかさずアルフィーに
「よしよしよし、こんな幼いのに、何も分からずによく今日まで我慢してきたのだね…偉いぞぉ…偉い」
シャムナスは、顔を下に向けてしまったアルフィーの頭をひたすら撫でてやった。
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