第1章 ネジ巻きの国へようこそ

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「シュルクのネジはよろしくて?」 カトレーナのネジが巻き終わり、シュルクに尋ねる。 「はいっ。お気になさらず。私ども王国騎士や使用人共は、朝一番で巻き合う日課がありますのでっ!!」 床に片足を立て、カトレーナにかしずく。 〝シュルク〟は、王国騎士兼姫の専用護衛を仰せつかっている23歳になり、まだ若いながらも腕の立つ騎士である。 少し長い、耳にかかるクリーム色の髪の毛は、まるでどこかの王国の王子の様に美しく、容姿端麗で、使用人の中でもかなりの〝イケメン〟と言う名の有名人であった。 そして姫の専用護衛に就任したのは、ついこの間のことだった。 なので、このネジ巻きの世界の姫、カトレーナとの絆もまだまだ浅い関係であった。 「私達のネジが止まってしまったら…その際に全ての記憶が失われてしまう…。」 小鳥のさえずりがする、窓辺に片手をつき、空を見上げるカトレーナ。 「巻けばまた、この命と言う名の歯車が回り出すけれど、記憶はまた一から紡ぐことになってしまう…」 ふいに視線をシュルクに戻す。 「こんな寂しくて悲しくて切ないことは、あるのかしら…。もしも存在するのなら、ネジの無い世界が羨ましいわ」 切なそうに呟くカトレーナを、シュルクは視線を外すことなく、ただただ見つめることしかできなかった。
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