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この〝ネジ〟というものは、一度きちんと巻けば、大体二日間は保つものだけど、こと切れてしまうとその代償というのが記憶を失うということになるので、誰もが恐れ、毎日毎日朝一番で巻き合うのが、この国民全員の習慣になっていった。
この国に、医者という者は居ない。
何せ、ここはネジ巻きの世界。
病気にかかる者が居ないし、至って平和な国で、王国騎士という名を持つシュルクも、なかなか剣を振るう機会がないのである。
しかし、少し変わった〝ぜんまい師〟という職業は存在した。
ぜんまい師のできることは、一人一人のネジの装飾を施せる技師である。
この国の姫であるカトレーナのネジはと言うと、一般の国民との形自体が違く、ルビーやダイヤ、サファイアやエメラルドといった宝石で装飾されている、とても華やかな、彼女に合ったネジである。
一般の国民はというと、くすんだ銀の、何も飾りっけの無い、とてもシンプルな作りになっている。
大体、そのおかげでお互いに身分の確認ができてしまったりするのである。
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