0人が本棚に入れています
本棚に追加
お城を出る際に、何人もの使用人たちに声をかけられる。
「姫様、ご機嫌麗しゅう」
「姫様、ご機嫌よう」
「姫様、ご機嫌麗しゅう、今からどちらへ?」
「姫様、先ほど…」
「姫様…」
姫様…
カトレーナが通る度に、会う全ての者が声をかけてくる。
少し、窮屈に感じてしまう。
その後ろを、何も言わずにシュルクはついていく。
赤い長い絨毯の敷いてある階段をおりると、すぐに大広間がある。
壁には大きな絵画が飾られており、天井からは立派なクリスタルでできたような、キラキラ輝くシャンデリアが飾られている。
そのまま、兵士の守る門をくぐり抜けると、すぐに小さな城下町が広がる。
すぐさま、カトレーナの姿を見かけると、国民達は駆け寄ってくる。
「姫様、ご機嫌麗しゅう。いつ見ても可愛らしい容姿で心が安らぎますわ」
カトレーナはというと、
「あら、奥様もお綺麗な召し物をなされていて、羨ましいですわ」
カトレーナは、愛想が良く、冗談じみた会話もできるので、多くの国民から愛されているのだ。
「姫様、これ、今朝採れた桃ですの。ちょうど熟しててとても甘いと思うので、是非召し上がってみてくださいな」
中年くらいの頭巾を被ったおばさんが、それを渡してくる。
「まあ、とても甘い香りが…。ありがとう。あとで是非いただきますわ」
カトレーナは、軽く会釈をすると、それを花の種を入れようと持ってきていた籐かごの中にしまった。
シュルクも、軽く会釈をすると、二人は町の外れに向かい、東の森を目指した。
最初のコメントを投稿しよう!