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「いつも、一人で勉学に勤しんでいた私を、姫様は外へ連れ出してくれた…。あれは、まだ私が15歳の時のこと…多分、姫様は7つぐらいの時でしょうか…」
カトレーナの頬が、ほんのり朱色に染まっている。
「勉強を学ぶことしかしらなかった私を、体を動かす楽しさを教えてくださったのが姫様なのですよ」
止まっていた足が、また森にめがけて歩き出していく。
「わ…私がですか?」
照れ隠しなのか、耳が赤くなってるのが、シュルクにはみえた。
普段笑顔を見せないシュルクの頬は少し緩んでいた。
「そうです。覚えてないですか?」
「な…7つの時でしたら、覚えてても良い記憶かもしれませんが、いまいちすぐには思い出せませんわ…ごめんなさい…」
「いえ、良いのですよ、姫様」
カトレーナのすぐ後ろを歩く。
「そんな、外に触れる楽しさ、体を動かす楽しさ、人と触れ合う楽しさ…、私に勉強以外を教えてくださった姫様を、大きくなったら是非、自分の手でお守りしたいと、そういう気持ちが芽生えたのです。それが、結果的に王国騎士という役職に就かせていただいたのですよ、姫様」
さっきから、恥ずかしくて後ろを振り向けないカトレーナの後ろで、シュルクは微笑んでいた。
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