アレ

50/53
前へ
/53ページ
次へ
佐和子さんがタイミングを見計らって、母のお土産のレモンパイと紅茶を出してくれた。 テーブルにそれが広がると、場の雰囲気は一気に和(ナゴ)んだ。 話題は自然に結婚式のことに流れていた。 私と母の気がかりは…話し合ってはいなくても きっと同じだろう。 渉さんはいわば…御曹司。 どんな式を挙げなければならないのかと楽しみな一方不安が募る。 けれど、渉さんが口にしたのは意外な提案だった。 「…式はごく親しい人間だけで、静かにやろうと思っています」 …実は… 私も初耳だった。 忙しい渉さんが任せておけと言うので あえて聞きもせず、口を出していなかった。
/53ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2944人が本棚に入れています
本棚に追加