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佐和子さんがタイミングを見計らって、母のお土産のレモンパイと紅茶を出してくれた。
テーブルにそれが広がると、場の雰囲気は一気に和(ナゴ)んだ。
話題は自然に結婚式のことに流れていた。
私と母の気がかりは…話し合ってはいなくても
きっと同じだろう。
渉さんはいわば…御曹司。
どんな式を挙げなければならないのかと楽しみな一方不安が募る。
けれど、渉さんが口にしたのは意外な提案だった。
「…式はごく親しい人間だけで、静かにやろうと思っています」
…実は…
私も初耳だった。
忙しい渉さんが任せておけと言うので
あえて聞きもせず、口を出していなかった。
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