第一章:始まりの日

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朝日が昇り始めたころ、カンカンと硬い何かがぶつかり合う音が部屋の中で響き渡っていた。 「はぁっ!!」 「ふっ・・」 道場の真ん中で二人の男が木刀を握り討ち合いをしていた。 一人は長身で長年鍛え上げられた肉体を持っており、髭を生やしてはいるものの大人としての魅力を漂わせる男性。 そして、その男性は笑みを浮かべながら目の前で一心不乱に打ち込んでくる少年の木刀をいなしている。 対して、一本を取るために必死に木刀を振るっているのは、まだ成長期が始まったばかりで雰囲気が長身の男性と似て来始めた少年である。 「どうした、どうしたさっきより腰が入ってないぞ!!」 「うわ!?」 そう言って、少年が振るった木刀に強烈な一撃が入り大きく腕が跳ね上がり、そのまま道場の端まで吹っ飛ばされた。 「うっ・・・いてて」 辛うじて受け身を取ったが、受け止めた衝撃に手が痺れてしまい木刀が手から滑り落ちてしまった。 「まだまだ修行がたりないな。」 「くぅ・・・まだまだ!!親父、もう一回だ!!」 成長期が始まったばかりの少年は気合を入れるように叫び立ち上がる。彼の名は、天道 晃(てんどうこう)、この天道家の長男である。 晃は落ちていた木刀を拾い上げて目の前で立つ男性を見据える。 「ははは、そろそろ時間だからあと一回だけだぞ」 自分の肩を木刀の峰で叩きながら笑う彼は晃の父親、天道 泉(てんどういずみ)、昔から存在する流派、白夜真抜流の四代目を受け継いでいる男だ。 そして、五代目を継ぐことになっているのは、その息子である晃である。 「いくぞ、親父!!」 晃は木刀を左手を鞘の代わりにし、納刀の構えと取り上体を低くして集中力を高める。 「おう、どっからでもかかってきな」 泉も晃と同じ納刀の構えを取って、上体を低くするが表情は笑みを浮かべたままだ。 長い沈黙が流れる中、最初に踏み込んだのは晃だった。 「やぁ!!」 白夜真抜流 壱ノ型 刹波(セッパ) 踏み込んだと同時に小さな体から右薙ぎで放たれる。 その斬撃は斬られたことすら認識できない程の速さと鋭さを誇っていた。 「甘い!!」 しかし、それは子供にしては速いと言うだけである。 泉から見た晃の斬撃はゆっくりと動いているようにしか見えず、晃の斬撃は受けとめられるどころか斬撃ごと同じ技でそっくりそのまま返されてしまった。   
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