第一章:始まりの日

3/26
前へ
/1636ページ
次へ
吹っ飛ばされた晃は受け身に失敗し仰向けに倒れたまま動かない。 吹っ飛ばした本人である泉は気にすることなく、道場の時計を確認すると―――。 「そろそろ、時間だな・・・晃、『いつもの』はしっかりやってから来いよ」 そう言って道場から、出て行った。 「・・・・はぁ・・・」 泉が道場の扉を閉めたと同時に晃は目を開け溜息を吐き出す。 起き上がると泉に言われた通りに『いつもの』を実行した。 一時間程経過して、晃が道場から出るとさっきまで薄暗かった外は日が昇っており朝を迎えていた。 晃は眩しい日差しに顔を歪めながら家に入った。 家に入るとトントンと一定のリズムを刻む音が聞こえてきたどうやら母親が朝食を作り始めているみたいだ。 その音を聞きながら晃はシャワーを浴びるために洗面所の扉を開けた。 そこにはシャワーを浴び終えタオル一枚で歯を磨いている泉の姿があった。 「おう、晃、シャワーか?」 いつものように聞いてくる父親に呆れたように溜息を吐く。 「親父・・・姉貴と璃菜が起きてくる前に服着ろよ・・・。」 そう言って道着を脱ぎ捨て、浴室に入るとすぐに扉が開く音がして、外から悲鳴と何かがぶつかる音と『パーン!!』という何かが弾ける音が聞こえてきた。 晃はその音を聞いて、『またか』と思いながらシャワーを浴び始めたのだ。 晃には一つ年上の姉、茜(あかね)と一つ年下の妹、璃菜(りな)がいる。 晃は真ん中で弟であり兄でもある存在だ。 二人とも重度のブラコンで隙があれば、晃のベットに入り込む始末だ。 しかも、中学入学してから二ヶ月、茜が昼休みに一年の教室に来て晃を連れ去る事もしばしば、二年生に上ると、璃菜も同じ中学に入学するため、更に状況が悪化し引っ張り回される事は目に見えている為、最近の悩みとなっている。 母親は優姫(ゆうき)と言う名前で、先祖代々、星読みの巫女の家系の生まれで、三人の子供を産んだとは思えないほどの若さを保っている。 というより、歳を取っても全く皺が増えないことに疑問を覚えるほどだ。 そして、彼女は星読みの家系から受け継いだ、鋭い勘みたいなものを持っており、いつも何かあったりすると分かっているのかのように、黙って話を聞いてくれたりと三人ともかなり助けられている。
/1636ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15779人が本棚に入れています
本棚に追加