第1章 癒えない傷跡

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……動…けない?……そんな!? この状況で指一本と動かせない!? 成す術もない状況に気を取られてしまったせいで、いつの間にか目の前まで接近されていたことに気付かなかった私は、一人の男に押し倒され、その上から口を押さえつけられる。 声を上げる事すらも出来なくなった。 同じだ。 私は今、あの時と同じ状況に追い込まれてしまった。 あの時感じた恐怖が、一気に吹き出してくる。 身体は動かせないのに、全身が凍りついていくような感覚が駆け巡っていく。 こんなはずじゃ、どうしこてこんな事に、服を引き裂かれていく中、悪夢のような状況に私はパニックを起こしかけていた。 声を上げようにも口を押さえつけられているせいで、無様に喉を鳴らす事しか出来なかった。 どんなに頭の中で懇願しても、一切身体を動かすことが出来ない事実も変わらない。 このまま私は、こいつらに陵辱されてしまうの? ……嫌、それだけは絶対に嫌! 助けて!…誰か!……誰か!! あられもない姿を晒す中、必死に助けを求める。 誰にも響くはずのない、喉を鳴らすような声と頭の中の声で、私は必死に叫び続けた。 その次の瞬間、一人の男の首がありえない方向に折れ曲がった。 いきなりのことで、思考能力に急ブレーキがかかり、私はただ呆然とする。 私は何もしてはいない。 むしろこの状況だから何も出来るはずがない。 にも関わらずたて続けに、もう一人の男には、額に小さな風穴が出来て、そこから大量出血して男は倒れた。 一瞬にして二人組の男は、事切れた人形のように絶命してしまった。 なんだったの?一体何が? すると突然、また目の前に気配が出現した。もう訳がわからない。次から次へと一体なんだってのよ。 この悍ましい状況から開放されても、恐怖で心臓が破裂しそうな速さで鼓動を続け、息も途切れ途切れ。 ここから更に何が来るのか、そう警戒しつつ、気配のする方向に意識を向ける。 最も警戒したところで、身体が動かない事にはどうしようもないんだけど。 でも次に現れた気配の正体は、私の不安や恐怖をぬぐい去ってくれた。
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