始まり 第1章

10/10
前へ
/30ページ
次へ
その日の夜。 全く勉強は進まずに一日が過ぎてしまった。 晋爾は、夕食と風呂をさっさと済ませて、机に向かっていた。 その様子を、ベッドに腰掛けニコニコと笑顔の佳那汰が、風呂から戻ってずっと見ている。 たまらず晋爾が「そんなに見られてると、気が散る…そして穴が空く。」と、振り返りもせずに言った。 「穴は空くか知らないけど、オレのことはお構い無く。」 その言葉に、晋爾は思わず振り向き「そういうことじゃねぇし!!気になるから!」と大声で言っていた。 「晋爾くん、声大きいよ。」 「誰のせいだよ…もういいや、今日はやめる。それよりも、お前に聞きたいことがある。」 「なぜ、オレが王族の話を知っているのか…でしょ?」 「それもだけど…。」 「オレの火傷と、晋爾くん…晋爾様の力。まあ…そろそろ、晋爾様にはお話しなければなりませんね。でなければ、いつまで経っても貴方の不信感は消えないでしょうから。」 突然、黛の口調が変わった。 いつも無邪気に振る舞う黛と、僕の目の前にいる彼は、同一人物か? 「お前…急に…。」 「驚かれるのも無理はありません。オレは、貴方の執事…貴方は、この国の王になるお方なのです、晋爾様。」 晋爾は思わず椅子から立ち上がる。 その前には、膝を付き胸に手を当て頭を下げる佳那汰の姿があった…。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加