6人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
児童養護施設【ことりの家】。
そこに、彼は庭にあるベンチに座ってイヤフォンで音楽を聴きながら読書している。
周りには、遊具なんかで遊ぶ子どもたち。
同年代の少年たちは、元気に走り回ったりゲームをして遊んでいる。
周りに興味無さげに、時々見渡したかと思えば、すぐに本に目を落とす…。
彼の名前は八神晋爾(やがみしんじ)。
生後すぐに両親から捨てられた少年だ。
周りの音は雑音だらけだ。
僕を見て指を指す同級生たち。
僕を怖がって近付いてこない小さい子たち。
僕を腫れ物に触るように扱う施設の人たち。
もう、どうでもいい…。
音楽と、本があれば僕の世界は成立するんだから。
ある日、ことりの家に新しく少年がやって来た。
彼の名前は黛佳那汰(まゆずみかなた)と言った。
晋爾と同じ14歳で、とても明るくて活発で、キラキラとした笑顔に綺麗に整った顔に白い肌、髪は染めているのか赤みがかった黒髪に、瞳も同じ色をしていた。
少しだけ、晋爾は興味を引かれたが、すぐに本へと目を落とす。
そんな晋爾に佳那汰は近付くと「キミが八神晋爾くん?これからよろしくね?オレ同じ部屋なんだ。」と笑顔で手を差し伸べてきた。
晋爾は「ああ。よろしく。」と一言、佳那汰を見ずに本を見たまま握手することなく挨拶をした。
そんなことは気にしていない様子で、佳那汰は笑顔で「うん、よろしくな!」と言った。
二人のこの出会いは、偶然か必然か…晋爾の生活はここから劇的に変わっていった…。
最初のコメントを投稿しよう!