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晋爾は、何時ものように庭にあるベンチに座って音楽を聴きながら読書している。
そこへ佳那汰がやってきた。
「晋爾くん。」
晋爾はイヤフォンを外し顔を上げると「…ああ、黛か。なに?」と無表情に言った。
「晋爾くんさぁ…学校行かないの?」
突然の質問に、晋爾は眉間にシワを寄せた。
「ああ、そんな怖い顔しないで?なんで行かないのかなぁって思っただけだからさ?」
「…別に…行く必要ないから。僕はこの世に生まれてきてはいけない人間だから…。」
それだけ言うと、再びイヤフォンをして本へと目を落とす晋爾の隣に、笑顔の佳那汰は座り、ただ空を見上げてボーッとしていた。
夕暮れになり、外で遊んでいた子どもたちは次々に室内へと入っていき、部活が終わり帰宅する者や、バイトから帰ってきた者たちが、次々帰宅してきた。
晋爾は、切れのいい所で本を読み終えると、隣にずっと座ってそのまま寝入ってしまった佳那汰を怪訝そうに見ると「おい、黛。そろそろ起きろよ。夕飯の時間になる。」と声を掛けた。
佳那汰は「んー!よく寝たー。」と伸びをしながら、笑顔で言った。
起きた佳那汰を見て溜め息を吐くと「僕、先に行ってるから。」と背を向けて先に室内へと向かう晋爾の後ろ姿に笑顔を向けたまま「さて、貴方はいつになったら目覚めるのですかね?」と、意味深な言葉を呟いた…。
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