始まり 第1章

6/10

6人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
地位とかなんとか、そんなものには興味はないんだ。 ただ僕は、周りの人たちと同じ体が欲しいんだ。 こんな、なんの役に立つかわからない力なんかいらないんだ…。 夕食の時間。 仲の良い子達は皆近くに座り食べている。 広い施設では、沢山のテーブルやイスがあり、好きな場所で食べることができる。 ちなみに、この施設は三階建てになっており、食事は一階の広場に施設の職員と中学生と高校生の食事の当番が、テーブルやイスと配膳を行う。 普段は、広場として使っておりテレビも置いてある。 そんな広い場所に、隅っこの窓側で一人黙々と夕食を摂る少年の姿…晋爾だ。 晋爾が一人で何時ものように食事をしていると、佳那汰がやってきて「ここ、座っても?」と、笑顔で晋爾の向かいの席を顎で指した。 それに晋爾は「勝手にどうぞ。」と、無表情で返した。 佳那汰は、そんなことは気にせずに「ありがとう。」と、また笑顔で返した。 佳那汰が晋爾と食べていると、少年が二人近付いてきた。 「お前、そいつといない方がいいよ。」 「そいつって…晋爾くんのこと?」 「うん、だってそいつ…化け物だから…。」 化け物の言葉に晋爾は反応すると、少年二人を睨み付けた。 少年たちは「うわー!」と悲鳴を上げた。 そんな二人を見た晋爾はにやりと笑い「化け物…ね。餌食になりたいならやってやろうか?」と言うと立ち上がり、少年たちに両手の掌を向けた。 その瞬間に、晋爾の両手からは雪のような、氷の様なものが出て来ると、少年二人は逃げ出した。 「ふぅー。」と、溜め息を吐くとイスに座り直して、晋爾は何事もなかったかのように夕食の続きを食べだした。 佳那汰は、その様子にキョトンとしたまま晋爾を見ている。 「…なに?化け物とでも言いたい?見たろ?僕は人間じゃないんだ。他にも炎も出るし風も水も何でも出るけど見たい?」 「いや…。」 「…お前、僕といると孤立するよ?だから、僕に関わらない方が…」と全てを言い終わらない内に、佳那汰は笑顔で「やっぱり、貴方はオレが探していた人だ。」と言うと、夕食を食べ始めた。 「…探してた?どういうことだよ?」 訳のわからない晋爾は、佳那汰に話しかけたが「今はまだ、それを言うべき時期ではないから、その時がきたら言うよ。」と笑顔で言ったまま、晋爾が何を聞いても教えてはくれなかった。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加