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地位とかなんとか、そんなものには興味はないんだ。
ただ僕は、周りの人たちと同じ体が欲しいんだ。
こんな、なんの役に立つかわからない力なんかいらないんだ…。
夕食の時間。
仲の良い子達は皆近くに座り食べている。
広い施設では、沢山のテーブルやイスがあり、好きな場所で食べることができる。
ちなみに、この施設は三階建てになっており、食事は一階の広場に施設の職員と中学生と高校生の食事の当番が、テーブルやイスと配膳を行う。
普段は、広場として使っておりテレビも置いてある。
そんな広い場所に、隅っこの窓側で一人黙々と夕食を摂る少年の姿…晋爾だ。
晋爾が一人で何時ものように食事をしていると、佳那汰がやってきて「ここ、座っても?」と、笑顔で晋爾の向かいの席を顎で指した。
それに晋爾は「勝手にどうぞ。」と、無表情で返した。
佳那汰は、そんなことは気にせずに「ありがとう。」と、また笑顔で返した。
佳那汰が晋爾と食べていると、少年が二人近付いてきた。
「お前、そいつといない方がいいよ。」
「そいつって…晋爾くんのこと?」
「うん、だってそいつ…化け物だから…。」
化け物の言葉に晋爾は反応すると、少年二人を睨み付けた。
少年たちは「うわー!」と悲鳴を上げた。
そんな二人を見た晋爾はにやりと笑い「化け物…ね。餌食になりたいならやってやろうか?」と言うと立ち上がり、少年たちに両手の掌を向けた。
その瞬間に、晋爾の両手からは雪のような、氷の様なものが出て来ると、少年二人は逃げ出した。
「ふぅー。」と、溜め息を吐くとイスに座り直して、晋爾は何事もなかったかのように夕食の続きを食べだした。
佳那汰は、その様子にキョトンとしたまま晋爾を見ている。
「…なに?化け物とでも言いたい?見たろ?僕は人間じゃないんだ。他にも炎も出るし風も水も何でも出るけど見たい?」
「いや…。」
「…お前、僕といると孤立するよ?だから、僕に関わらない方が…」と全てを言い終わらない内に、佳那汰は笑顔で「やっぱり、貴方はオレが探していた人だ。」と言うと、夕食を食べ始めた。
「…探してた?どういうことだよ?」
訳のわからない晋爾は、佳那汰に話しかけたが「今はまだ、それを言うべき時期ではないから、その時がきたら言うよ。」と笑顔で言ったまま、晋爾が何を聞いても教えてはくれなかった。
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