始まり 第1章

7/10

6人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
各部屋には、一台ずつテレビが置いてある。 晋爾は夕食を終えると、部屋のテレビでニュース番組を観る。 ニュースでは『ここ数日、話題となっている王位継承者ですが、誰が王位を継ぐ者となるのか全く決まっていませんよね?』と、女子アナが話している。 この世界では、王族と呼ばれる者がいて、晋爾の住むこの国では今の王が体調を崩しており、次の王となる者を探しているが、王位を継承できる者が今の王族の中にはいないと言うのだ。 テレビを観ながら「王がいなくなったら、外にいる魑魅魍魎(ちみもうりょう)は、誰が退治するんだ?」と話しかけている。 晋爾の言う魑魅魍魎とは、妖怪なんかのことである。 こいつらは、夜な夜な人々を襲い喰ってしまう。 昔からいる奴らは良い奴らだけではないため、悪さをする者たちを王族が排除してきた。 その王が病に伏せている今、野放しの妖怪たちはやりたい放題…社会人も学生も、18時までには帰宅するよう義務付けされているが、一日に数十人はそれを守らずに喰われている。 「…今日も喰われた奴らがいるのか…頭大丈夫か?まあ、もう喰われてるけど。」と呟いた後に背後から「だから、今王族の者たちは必死になって、王族の力を持った子どもを探してるんだよ。」と佳那汰の声が聞こえ、晋爾は振り返る。 「お前、なんでそんなこと知ってんの?」 「なんでだろうね?まあ、このことは王族しか知らない極秘の情報なんだけど。」 「…尚更、なんで知っている?」 「さぁねぇ?なんでだろ?」 そう言うと、笑顔で風呂の道具を手に持ち「オレ、風呂ー。」と去っていってしまった。 その後ろ姿に「ちょっとは、僕の質問に答えろよ。」と、晋爾は小さく呟いた…。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加