始まり 第1章

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次の日、火傷をした佳那汰の手は、すでにほぼ治りかけていた。 その手を見た、周りの子どもたちは「黛治るの早すぎじゃね?」「火傷、実は大したことなかったのか?」と話していた。 それを聞いていた佳那汰は「オレ、昔から傷とか治るの早いんだよねー。あれくらいの火傷なら、次の日にはほとんど治ってるんだ。」と、笑顔でこたえると、さっさと朝食を済ませて「晋爾くん、行ってくるねー。」と笑顔で手をヒラヒラと振りながら学校へと向かった。 黛の手の火傷は、火傷をさせた僕が一番どの程度の火傷かわかる。 自然治癒力ってもんが人間にあるとはいえ、あんな大火傷を負っていながら、次の日にはほとんど完治してるなんてありえない。 しかも、あいつは病院にすら行ってない。 人間のもつ治癒力に、そんな力があるとも思えない。 あいつは、何かを隠してる…。 晋爾は、朝食が終わると自分の部屋に戻る。 机に向かい、高校一年生がやる数学の参考書を取り出し、最後のページを開く。 施設を出た人たちの置いていった教科書を開きながら、参考書の問題を解いていくが、佳那汰のことが気になって、いまいち集中できないでいた。 晋爾は、持っていたシャーペンを置いて、耳にイヤフォンを着けてから、音楽を聞いてベッドに寝転んだ。 何も考えずに、ただ無心になった。 考えたって、答えがある数学なんかとは違う。 あいつが何者で、特異体質だったとしても僕には関係ない。 人と関わることほど、面倒なものはない。 しばらくして、晋爾は音楽を止めると再び机に向かい、勉強を始めた…。
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