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黄昏時
図書室。
貸出禁止書簡が並ぶ一角。
時刻は、夕方四時を過ぎた頃。
二月も終わりに近付いた最近は陽も短くなり、分厚いカーテンの隙間から覗く夕焼けは、橙と群青が混ざりあい斑に染まっている。
黄昏時は、時として逢魔ヶ時とも言うらしい。
この時間にこの場所を訪れたのは、単に夜を嫌って人がいる間にと思っただけだったが、逆に失敗だったかもしれない。
図書室内には、書簡整理を行う委員も含めて、まだチラホラと人影がある。
しかし、囲うように設置された本棚のせいで、この貸出禁止書簡のスペースだけは、自分以外に誰も存在していなかった。
今からする事を思えば、人の目がない事は好都合だ。
だが、少し離れた場所に気配が存在する分、余計に自分だけが独りで存在しているかのように錯覚させられる。
不安を掻き立てられる。
出来るだけ平静を装い、周囲を囲う本棚の、一番薄暗い隅へとそっと近付く。
ほんの少しの罪悪感と、幾ばくかの使命感のせいか、自然と忍び足になっていた。
焼けを防ぐためにかけられた暗幕のようなカーテンの直ぐ脇、唯一本棚の無い窓に近い位置。
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