第壱夜

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「そーだよ!隣の席だったこともあるし!」  羽山は、俺達にからかわれているとは露とも思わず、顔を上気させ喚いている。  羽山は、俺達三人の中で、一番に福寿入学が決まった。  中学時代から水泳の大会で成績を残していて、昨年温水プールを新設したばかりの福寿は、直ぐに彼女の推薦入学を認めた。  福寿に入学する事を切望していた俺としては早々に入学を決めた彼女を恨めしく感じていた。 「まぁまぁ、心は中2ん時からずっとガリ勉くんだったんだから、多目に見てやれよ」  からかわれている事に一向に気付かない羽山を見兼ね、龍臣が間に入る。  からかう矛先を微妙に俺に向けただけのような気もするが、そこは流しておく。 「え!?和希ってマジで一般で入ったの!?」 「……そうだよ」 「うっそ!すごっ!!」  龍臣とは違い手放しで誉める羽山。  元々大きな眼を見開き、尊敬の眼差しを向けてくる。 「なー、俺らみたいにスポーツ推薦じゃなく、一般で入学しちゃうんだから、凄いよな~」 「うんうん!」 「…………」  調子の良い龍臣は持上げ始め、羽山はそれに馬鹿真面目にコクコクと頷いている。
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