第壱夜

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 言われているこちらとしては恥ずかしくて仕方無い。 「いいなー、私も同じクラスなら良かったのにー」 「いいだろー、俺はしっかり心に勉強教えてもらっちゃうもんねー」  しかも当人をほったらかしにして勝手に盛り上がり始める。  なので早々に話を変える事にした。 「羽山は何組なんだ?」 「ん?私?私はC。あんた達の隣のクラス」 「……そうか」  龍臣にしても羽山にしても、中学の時からとりわけて仲が良かったわけではない。  俺は福寿に入学する事を目標に勉強ばかりしていたし、龍臣はバスケット、羽山は水泳を熱心にやっていた。  だが、これから先の三年で、こいつらと仲が良くなっていくんじゃないかって気が、漠然とした。 「かっ、和希、和希心くん!和希くんいらっしゃいますか~?」  三人で他愛ない話をしていると、そんな声が聞こえてきた。  余程焦っているのか、息を切らしどもっている。  見れば、先程新入生を誘導していた在校生が、未だ掲示板の前に留まり続ける生徒の群に向けて、背伸びをして声を張上げている。 「あれ、お前の事呼んでねぇ?」 「そうみたいだな」
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