第壱夜

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「何?和希なんかやらかしたの?」 「いや、そんなこと……」  否定しかけて、ふと思い出した。 「ヤバッ!俺行ってくるわ!」  慌て、血相を変えている在校生の元へと走り出した。 「心~?どうしたんだよー!?」 「悪ぃ、俺総代頼まれてたんだった」 「はぁぁ!?」 「はぁぁ!?」  駆け出した俺の背後で、取り残された二人は、疑問とも溜め息ともとれる声を上げた。  私立福寿高等学校。  名門校であるこの学校は、数年前から受験時の選考基準が他とは少し異なっていた。  中学時代に運動で何かしらの成績を残した者は、在学中学が推薦を出せば、直ぐに入学する事が出来る。  推薦入試は面接のみで、合格率は殆ど100%に近い。  しかし、反して一般入試は非常に難関で倍率は二桁に近い。  福寿は、毎年二百名程度の生徒を募集するが、その内百二十名はスポーツ推薦枠であり、一般受験枠は八十名が精々だ。  名門が故、実際には五百名を越える入学志願者が集まるが、合格出来るのは本当に一握りだった。 *
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