第壱夜

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 四月十五日  入学してからの一週間は、学校に馴れるなんて余裕はなく、怒涛のように過ぎていった。  入学式の翌日から、新入生は一斉に主要三科目の実力テストを受けさせられた。  これは、現在の学力によってコース分けを行い、コース毎に授業を受けさせるためだ。  学校の特性上、推薦入学者と一般入学者で学力の幅がある。  その幅を埋め、文武両道の名門を誇示するために制定されたカリキュラムがこのコース分けなのだ。 「心、おはよ~」  朝、校門のアーチを潜ろうとしたところで龍臣に会った。  龍臣は朝に弱いのか、まだ半ば眠っているような顔をしている。 「おはよう。お前、朝練は?」 「んー、うちは来週から……」  質問に回答しながらも、思いっきり欠伸をしている。  朝練が始まれば、もっと早くに登校を余儀なくされるだろうに、大丈夫なのだろうか。  スポーツ推薦で入学した奴等は、当たり前の事として自分の専攻する運動部へ、既に入部している。  彼等は、今後の三年間、クラスメイトよりも長い時間を部員達と過ごすことになる。 「あ゛ー、学校憂鬱だわー」
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