第壱夜

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 推薦組に比べ、一般組にとってコース分けは死活問題だ。  特進、上級、中級、初級、平常の五コースに分けられるのだが、一般組で初級コース以下に位置すると、進級が危ぶまれる。  酷い場合、早々に転校を勧められるなんて事もあるらしい。  最近は殆どの学校が出席日数を満たしていれば、留年て事にはならないらしいが、そのあたり福寿はシビアだ。 「でもさー、確実に心とは別コースだもんなー」  人の話を聞いているのか、龍臣はまだぐちぐちとぼやいている。 「人見知りの俺的には辛いぜー」 「阿呆。お前が人見知りなら世界中が引きこもりだ……ん?」  下らない冗談を垂れる龍臣に軽口を返しつつ、靴箱を開いた時だった。  スチール制の靴箱の蓋が開いた風圧で、何かがヒラリと舞った。  白く薄いそれは、桜の花弁が迷い込んだかのように見えた。  しかし、花弁にしてはやけに大きい。それに、今はもう四月も半ば。桜はとうに枯れている。  見惚れられるだけの時間を要して、右へ左へと揺れながら、それは地面へと舞い降りた。  半紙のような、指の長さ程の薄い紙片。  所有物にこのような物があった覚えはない。
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