第壱夜

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 ただのゴミかもしれない。  でも間違うことなく俺の靴箱から出てきたのは確かだった。  ならば、拾わないわけにもいかない。 「何々?もしかしてラブレターってやつ?」  すぐ脇で上履きへと履き替えた龍臣が、長い身を屈めるようにして覗き込んでくる。 「今時それは無いだろ?」 「じゃあ、果たし状?」 「もっと無い」  安直でもあり、突飛でもある発想に、適当に返しつつ紙片を見る。  すると確かにそこには文字が記されていた。  だが、龍臣が言ったような長々とした文章ではない。  たった数文字、   『 次はアナタ       あと42日 』  ―――とだけが記されていた。 「……何これ?」 「さぁ……?」  まったく意味が解らない。  悪戯にしても、意図が読めない。  勿論宛名も差出人もなく、そもそも俺に対して送られたのかも定かではない。  紙片は溶けて消えてしまいそうな程薄く、掌が透けて見える程だ。にも関わらず、どうやって書いたのか、字は克明に刻まれている。  ここまで正体不明だと、「悪戯だ」と笑いとばすことも出来なかった。
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