第壱夜

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 今までの話が無かった事のように、素知らぬ顔をして、自席へと踵を返す。  俺も同じように、使用していた椅子を元の位置へと戻し、立ち上がった。  だが、なんとなくモヤモヤするようなそんな気分が拭えない。  たった今繰り広げられた七不思議の話。  俺自身が超常現象を信じるかどうかは別として、どうにも腑に落ちない。  話の内容、『呪いの机』に関しては、どうでもいい。  本当によくある、ありがちな学校の怪談話だ。  だが、始めに話を持ち出した女子生徒の、話す前と後の態度の変化はなんなんだ?  もう一人の女子にしたって、肯定している割に、七不思議の他の話をどうして持ち出してこない?  そして、高知の不審な挙動と発言……  皆何か他の思惑をもって、口先だけで話しているような……そんな違和感があった。  自分の席へと腰を下ろそうとする間際、ふと目があった。  彼は、先程の会話の輪の中にいて、俺と同じように殆ど言葉を発せずにいた奴だ。  彼は俺の目を見つめたまま小さく小首を傾げる。  どうやら彼も拭えない違和感を感じていたようだった。 *
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