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『…………でも、それが何か関係あるの?』
ある。大有りだ。
それは有馬先輩には伝えられない。
だからもう少し質問を重ねることで返答を誤魔化した。
「その流れだと、杉浦さんは母方に引き取られたという事ですか?」
『そうだけど…………?』
「なら、杉浦さんはそれまで有馬の姓だった?」
『う、ん』
やはり、そうか……。
続けざまに発していた問いを俺は中断した。面と向き合っているわけではないので、相手からすれば突然無言になった状態だ。
でも、息を飲むようにして黙り込んだ俺に意味深なものを感じたのか、有馬先輩は何も言わずに次の言葉を待っているようだった。
その間に俺は作成したばかりの資料を自分の手元に引寄せる。
杉浦優一は、当時有馬優一だった。
この事実は資料を作成して浮かんだ二つの疑問の双方に関わる情報だった。
まず、第一に杉浦がどうして繭の兄と違って記憶を失う事が無かったのか。
それは、ここに起因するのではないかと仮説がたてられる。
繭の兄の詳細は不明だが、杉浦は全て記録する事が出来なかったと本人が言っていた。
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