第苦夜

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 だとしたら、本来学年が上がる時に記憶が失われ禍が降りかかるはず。しかしそうはならなかった。現在の杉浦の状態を見れば充分に禍が降りかかったようにも感じられるが、杉浦の精神状態が悪くなったのはまだ期日前だ。それに、本人が遺書なんかを遺しているくらいなのだから、禍とは多分死と直結しているのだろう。  その証拠に繭の兄は亡くなっている。その上、柳瀬先輩が言っていたではないか、「今まで七不思議に関わって生存を確認出来たのは一人だけだった」と。  他者が過去を調べて、七不思議に関わった被害者であると断定出来るとしたらそれは、高知のように怪異発生前に亡くなったか、『記録者』に選ばれたかのどちらかだけではないだろうか。  第二に、杉浦が有馬姓であったほうが少なくとも『記録者』の選定基準に関しては明確な基準があるという事になる。  俺と同じ位置の靴箱の所有者。その年の入学者数にもよるが、現在と同じ5クラスならC組の後半かD組の後半の学籍番号。苗字が杉浦だったらどちらにも当てはまり難いが、有馬ならば、あ行後半。可能性はある。 「……先輩、杉浦さんは一年時どのクラスだったかわかりますか?」
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