第苦夜

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「条件は場所との関連性だけじゃなかった………」  頭の中が言葉となって漏れていく。  有馬先輩が怪談話をする間、俺は机に残っていた白紙のルーズリーフに半ば無意識に文字を連ねていた。  考えていたのは先の杉浦が有馬姓であった際、その前に四人分他の苗字が組み込まれる可能性。要するに出席番号順で『ありま』の前に入るであろう苗字の模索。  例えば、相川、浅香、足立……等々、二文字目が五十音の後半であることによって有馬の前に来そうな苗字は結構ある。  それをなんとなく文字にして考えていたのだが、それは電話中無意識に行っている落書きしているのと変わらない。そのせいか、俺は漢字だけではなく他の言語にしたり、バリエーションをつけて書き殴っていた。平仮名、片仮名、そしてアルファベット…………。 『ねぇっ!?どうしたの?…………何か解ったの??』  痺れをきらしたように先輩が言う。その声は不安げで、俺がこのまま電話を切ってしまうのではないかと危惧しているような鬼気迫るものだった。  二ヶ月の間気付いていなかった場合、『呪いの机』がどんな影響を及ぼすかは分からない。
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