第苦夜

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 見付けたその時から日付がカウントされるのか、はたまたノイローゼにならん勢いで繰り返し同じ言葉を脳裏に焼き付けられるのか、もしくは直ぐに操られたような状態になってしまうのか。  有馬先輩はただ文字を見付けたとしか言わず、現状の真意は定かではない。  でも、不安な事は間違いないはずだ。だから、教えられる情報は教えてあげたいと思っていた。  そしてこれは教えても問題ない情報だった。ましてや半ば既に漏らしていた。 「……先輩、たった今判ったんです。どうやって七不思議の被害者が選ばれているかが」 『…………』  落ち着こうと深く呼吸をして整えそう云うと、電話の先からは唾を呑む音だけが返ってきた。 「まずこれは既に分かってると思いますが、被害者は全員七不思議の話に由来する場所に深く関わっています。…………更にそれとは別の共通点、それが苗字の頭文字の母音です」 『苗字の頭文字…………あ!』  思い返してみて先輩も気付いたのだろう。俺と同様どこか拍子抜けしたようなそれでいて驚愕に満ちた声が漏れ聞こえてくる。 「高知、佐川、羽山、柳瀬、有馬……全員頭文字の母音はあから始まっています」
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