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なんだか、下らない推理ドラマの結末が事件自体起きていなかったと言われたような、悔しさと腹立たしさと驚きとがない交ぜになって苦いものが込み上げてきたような気分だった。
携帯を起き、灯りが点ったままのパソコンを見る。まだ返信は来ていない。
悔し紛れに通話中に書き殴ったメモをくしゃくしゃに丸めてゴミ箱に放り込んだ。
「心~?林檎剥いたけど食べる~?」
すると階下からそんな声が届いた。
丁度いい。口が苦かったところだ。
俺は「ん」とだけ返事を返し階下へと下りる。
「青森のおじさんがね、一杯送ってくれたのよ」
リビングには親父と母さん、そしてテーブルの上には赤い耳を生やした兎の群れ。
「一杯って…………一気に剥かなくても」
思わず小さく呟くが母さんは素知らぬ風だった。
「なんだ、心。年末だっていうのに勉強してたのか?」
半ば呆れて、兎を一羽口内へと運ぶと親父が隣を示して声をかけてくる。
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