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「……にしても、なんで母さんがそんな事知ってるんだよ?母さんは福寿じゃないだろ?」
突如話に入ってきた母さんの言動に疑問を感じ、訊ねる。
母さんは福寿生ではなく近隣の女子高に行っていた。親父とは拓真さん、母さんの兄と親父が仕事上繋がりをもち、その関係で出会って結婚したはずだった。
「勿論お父さんに聞いたのよ」
二人がけのソファの親父の横に腰をおろし、自分も一羽をつまみ上げながら、さも当たり前のように母さんはそう言った。
けれどはたしてするだろうか?成人した恋仲の男女が高校時代の七不思議の話なんて……
「あぁ、そうか心は知らないもんね。実はね、お母さんとお父さんは、付き合う前に一度出会ってるのよ」
懐疑的な眼差しを向けていると、しゃりっと林檎を頬張って、母さんは話始める。
「お母さんとお父さんはね、中学生の時同じ塾に通ってたの。お母さんは親友に誘われて行き始めたんだけど…………お父さんその時すっごくモテてたの。頭も良かったし、格好良かったから、塾の女子皆の憧れの的だったわ」
それがわざわざ他校の七不思議を聞く事とどう関係しているのかさっぱり分からない。
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