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第拾夜
一月五日
年明け。参賀日を越えたこの日、俺は自宅を離れ、都内郊外の神社を訪れていた。
勿論初詣という名目ではない。
「心!よく来たな!」
正月の割には人の多い駅前で、なんとも落ち着かない調子で待っていると気さくな声が直ぐ脇からかけられた。
「すいません、わざわざ迎えに来てもらって」
少しだけいつもより大きめの鞄を背負い直しながら頭を下げると、彼は「相変わらず堅いな」と言って苦笑する。
従兄弟である拓真暁さん、以前御守りを貰って以来会っていなかった彼に、俺はこの長期休みを利用し、会いに来た。
目的は、改めての礼と相談。
「元気そうで良かったよ……っと、ちょっとこっから少し歩くケドいいか?」
「はい、大丈夫です」
「今は休み中で、スクールバスも走ってねぇからさ…………あ、待たしてるんだった。話は歩きながらで」
暁さんはどこか落ち着かない様子で、駅前の人の動きに逆らうようにして歩き出す。
俺もそれに続いた。
「…………休みの間も結構人いるんですね」
歩調を合わせるように隣に並び、口火をきるようにそう言った。
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