第拾夜

2/63
前へ
/635ページ
次へ
「ここの若宮神社は割と有名なんだよ。パワースポットとかってネットでも紹介されてたし、他とはちょっと変わったとこもあるからさ」  「まぁ、今から向かうとこがそこなんだケドさ」と付け加えつつ、そう教えてくれた。  駅前の繁華街から離れるようにして進んでいく。前方には大して標高は高くない山があり、どうやら目的地はその山中のようだった。 「じゃあ、今は繁忙期ですよね。そんな時に来ちゃってすいません」 「かしこまんなって……俺も気にはなってたんだ。でもこっちもバタバタしてたからさ…………連絡くれて良かった」  暁さんはそう言って笑う。  なんだか、以前会った時と随分雰囲気が違っていた。前は沈んでいる風だったのだが、今は頼りがいがあるというか、強さみたいなのが表情や態度から伝わってくる。  俺が「訪ねたい」と申し出た事にも二つ返事で了承してくれた。 「誠さんと純さんは、元気か?」 「親父は多少怪我の後遺症が残ってますけど、母さんは通常運転です。今日は暁さんの実家に泊まってるから、迷惑かけてなきゃいいんですけど」 「……むしろこっちのほうが迷惑かけてそうだわ。後で連絡してみるよ」
/635ページ

最初のコメントを投稿しよう!

54人が本棚に入れています
本棚に追加