第拾夜

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 俺が肩を竦めて言うと、暁さんはこめかみを押さえて嘆息する。  俺が暁さんの所に泊まり掛けで行くと言ったら、両親はだったらと同様に泊まり掛けで拓真家へと訪問する事にしたらしかった。  正月だからと羽目を外さなければいいがと少し心配ではあったが、親父は昨年怪我のせいで仕事にも支障をきたしていたし、拓真さんと話す事で活力を取り戻せればいいとも思っていた。 「お互いいつまでたっても大人にならない親をもつと大変だな」 「まったくですね」  そう言って、顔を見合せ笑う。 「ところで…………お前夕飯もう食ってきたのか?」 「いや、まだです」 「丁度良かった、なんか準備してくれてるみたいだからさ」 「そうなんですか?」 「おぅ、因みに今晩泊まる先もそこな」 「え!?」  てっきり暁さんの住まいに泊めてもらえるものだと思い込んでいたのだが………… 「なぁに、驚いてんだよ?俺ん家より喜ぶと思ってたんだケド?」 「喜ばないですよ!だって初対面なんですよ。いきなりそこまでお世話になるわけには…………」  別に人見知りというわけではないが、流石に気がひける。
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