第壱夜

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 一頻り感慨に耽った後、やっと校門を潜り抜けた。 「新入生は掲示板でクラスの確認をしたら此方へお越しくださ~い!」  浮かれはしゃぐ新入生の群れを、在校生らしい数人の生徒が声を張上げ誘導している。  首を巡らせる必要もなく、掲示板は直ぐに見付かった。  校舎の壁に沿うように、人だかりが出来ていた。  周囲に倣って掲示板へと近付き、連なる後頭部の隙間から、自分の名前を探る。  A組からE組。一学年五クラス。  上から氏名順に男女混じりあって並ぶ名前を目でなぞっていく。  カ行から始まる俺の名前は、少し後方からでも見付かる筈だ。  A、B、C……と順々に見ていると…… ドンッ!  前から来た奴と肩がぶつかった。  余程前列で掲示板に張り付いていたのだろう、後から来た人間の波に飲まれてしまったに違いない。  混み合う人の壁を掻き分けてなんとか脱け出して来たところで、後方にいた俺にぶつかってしまったみたいだった。 「大丈夫か?」  最後尾で少し距離を置いていた俺と違って、なんとか人混みを抜けてきたそいつは、油断していたのか見事にぶつかった衝撃でよろめいた。
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