第壱夜

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 多少の怒りを込めて見上げる俺に、悪びれた様子もなく龍臣はへらへらと笑っている。 「それにしても…………お前本当に福寿受かったんだな!」 「まぁな」  龍臣は、小、中と同じ学校に通っていた。  ずば抜けて仲が良かった訳ではないが、九年の間に数回同じクラスになった事があり、遊んだ事も何度かある。  昔っから背が高かったが、中学に入ってからはバスケ部に入りひょろっとしていた身体に筋肉がついた。  今となっては165cmの俺より頭一つ分は高い。  反して、顔立ちは垂れ目のベビーフェイス。  更には、仔犬のように人なつっこい性格な事も相まって、女子に人気があった。 「龍臣、クラスは?」 「ん?心と一緒」  言われて、未だ自分がどのクラスなのかを確認出来ていない事に気付く。 「俺、まだどのクラスか解ってねぇんだけど……」 「そーなの?Dだよ。1ーD」 「……あっそ」  再度探す必要もなく、答え合わせが行われた。  龍臣は「ほらっ」と掲示板の方を示してみせるが、龍臣の背だからこそ容易に見えるのだろう。 「うちの中学からは三人だけみたいだね、福寿に入った奴」
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