第壱夜

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「俺とお前と……?」 「アイツ」  そう言って、龍臣は後方へ顎をしゃくり、巨体を脇にどけた。  龍臣が避けた向こう側には、確かに見た顔があった。  色素の薄い肩に僅かにかかる程度の長さの髪。  身体は細く、背は高め。  よく言えばモデル体型だが、やや肩幅が広い。  陽の光が染み付いたような褐色な肌。 「あっ!大島(オオシマ)!和希(カズキ)!」  周囲の事等気にする様子もなく、大声で呼び掛け、大きく手を振る少女。  軽く手を挙げ返してやれば、彼女は真っ直ぐに此方へ走り寄ってきた。 「二人共、いるなら声かけてよ~」 「だって美織(ミオリ)さん、もう既に沢山お友達いる感じだったじゃんか」  小動物のように頬を膨らませる少女に、龍臣が茶化すように言う。 「だからって…………話し掛けてくれたっていいじゃん」 「だってなー、女の子ばっかで固まってるとこに声かけづれぇし。なぁ、心?」 「ん?……まぁ、俺は羽山(ハヤマ)がこの学校って事自体忘れてたけどな」 「ひっど……!和希はこの間まで同じクラスだったでしょーが!?」 「そうだったっけ?」
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