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樹利さんはバッグの中から、手のひらサイズの箱を取り出してカウンターの上に置いた。
「時計職人だった、俺のじいさんの形見なんだけど、どういうものなのか知りたくて」
「――失礼いたしますね」
手袋をした手で、丁寧に箱を開けると、そこには割と小ぶりな金色の懐中時計が入っていた。
手に取り、そっと視線を落とした。
「これは、スイスの高級時計メーカー、パティック・フィリップの懐中時計ですね。
こちらは『リコシェ・シリーズ』と言いまして、スイスの宝飾家・ジェルベとの共同作で、作られた期間がとても短い、大変貴重なものです。
大事にされていたようで、状態も良いので、金銭的価値としては200万くらいでしょうか」
――200万。
この店には時折、色んなものが鑑定に持ち込まれるけど、200万クラスの物が出ることは珍しい。
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