25785人が本棚に入れています
本棚に追加
「……はよイイ人見付けて、結婚して、僕に子どもの顔 見せてや」
何も気付かない振りをしてそんな風に言う。
ユキは一瞬、ひどく傷付いた表情を浮かべたかと思うと、
「やだな、真也くん。
まるで、お父さんみたいなことを言うんだね」
と、痛々しいような笑顔を見せた。
「父親みたいなもんやろ」
「んー、父親というより、兄さんかな」
「ほんまやな。
ユキは大事な弟やで」
「……うん」
ユキは目と鼻先を赤くさせて、力なく笑う。
――ほんまに、ずっと守って来た大切な存在だけに、決まり悪い。胸が痛むわ。
最初のコメントを投稿しよう!