episode2 『秋の終わりに』

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「そもそも、オーナーがセレブな方だから、それが当たり前なんでしょうね」 ポツリと漏らした私に、ホームズさんはそっと口角を上げた。 「それは違いますよ、葵さん」 「えっ?」 「オーナーは元々裕福な方ではなかったですしね。 ですが、昔からよく言っているんですが、『人が金を追い掛けるのではなく、金が人について来る』と。 つまり例えお金がなくとも、今はたまたまないだけで、やがて必ず金がついてくる人間だからと信じて、心付けを渡し、人にご馳走しと富豪のように振る舞っていたら、本当に金がついて来ると。 豊かな心が、豊かさを呼ぶということですね。 それが真実かどうかはさておきまして、非常に素晴らしいと感銘を受けまして、自分もそうありたいと思っています」 胸に手を当ててニコリと微笑むホームズさんに、心底感心してしまった。
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