episode2 『秋の終わりに』

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――― ――――― ―――――――― 温泉を堪能して、そっと浴衣を羽織った。 羽織り方は以前、『蔵』で秋人さんにしっかりレクチャーしてもらったから、頭に叩き込まれている。 『男が後ろから抱き着いて、その右手がスッと胸元にスムーズに入る形が正解なんだ。 着物っていやらしくできてるよね』 あの時、秋人さんは私の両肩を抱くようにして、背後から顔を覗き込んでそう言ったんだ。 間近で見る秋人さんは、それはイケメンだったというのに、 私は浴衣に手を忍ばせる相手として、ホームズさんを想像(妄想?)してしまったわけなんだよなぁ。 思えばあの頃から、私はホームズさんのことを好きになっていたのかもしれない。 って、もうすぐ、あの妄想が実現しそうなんだけど。 急にカッと頬が熱くなる。
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