79

7/8
前へ
/8ページ
次へ
 柔術場の外で小石が跳(は)ねるような音がした。サイコはポニーテールの先を揺らして、飛びあがった。 「男子便にいるとこを誰かに目撃されたら、東園寺家の一生の恥だよ。とにかくどっか別な場所に移動しよ。掃除はもう完璧だから」  クニが叫んだ。 「あー、ありがとう、彩子姫。おれ一生恩に着るわ。デートでもなんでもつきあうから、暇(ひま)になったら声かけてくれよー」  サイコは口をとがらせて、男子柔術場便所と書かれたバケツをクニに差しだした。 「デートは生涯お断り。これ、用具置き場に返してきて」  クニが受けとるといった。 「どこかの個室にクソが落ちてなかったか」  曽我清子の顔色が変わった。 「ああ、あった。わざわざ便器の横に大量にしてあったよ。あんた、犯人を知ってるのかい」
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

329人が本棚に入れています
本棚に追加