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柔術場の外で小石が跳(は)ねるような音がした。サイコはポニーテールの先を揺らして、飛びあがった。
「男子便にいるとこを誰かに目撃されたら、東園寺家の一生の恥だよ。とにかくどっか別な場所に移動しよ。掃除はもう完璧だから」
クニが叫んだ。
「あー、ありがとう、彩子姫。おれ一生恩に着るわ。デートでもなんでもつきあうから、暇(ひま)になったら声かけてくれよー」
サイコは口をとがらせて、男子柔術場便所と書かれたバケツをクニに差しだした。
「デートは生涯お断り。これ、用具置き場に返してきて」
クニが受けとるといった。
「どこかの個室にクソが落ちてなかったか」
曽我清子の顔色が変わった。
「ああ、あった。わざわざ便器の横に大量にしてあったよ。あんた、犯人を知ってるのかい」
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