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 男子よりも太い腕を袖(そで)まくりして、柔道の名手がいった。 「たぶん、カザンの腰ぎんちゃくの安田だと思う。あいつ、腹が痛いって笑ってたから」 「そうか。わかった。いつかこの借りは返してやる」  安田の腕では清子にはとてもかなわないだろう。タツオはすこしだけ愉快だった。ジョージが笑みをふくんだ声で静かにいった。 「さあ、ちょっと移動しよう柔術場の裏の物干し台はどうかな。星がすごくきれいなんだよ」  サイコがにっこりと笑っていった。 「ジョージくんはそういう台詞(せりふ)が似あうよね。タツオにはぜんぜん無理だけど」  そういうと東園寺家のお嬢さまは先頭に立って、男女4人ずつの集団を率いて、長い廊下を物干し台に向かった。
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