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 夜の食事が終わると、進駐官養成高校の宿泊場も静かになる。眠りに就(つ)くまでの数時間を予習したり、本を読んだり、趣味で過ごしたり、自由につかえるのだ。厳しい軍事教練があった日には、身体(からだ)を休め体力を回復させる貴重なひとときだった。  その自由時間をタツオの3組1班は、便所掃除に追われていた。男子宿泊場には各階2ヵ所ずつ6つのトイレがある。柔術場は通常の教室くらいの広さだった。  毎朝の久本主任のチェックは厳しく、すこしでも汚れが残っていると罰として素手(すで)で便器を掃除させられるのだ。勢い夜の便所掃除は熱心なものにならざるを得なかった。  夜9時過ぎ、宿泊場のトイレ掃除を終えた1班は柔術場の用具置き場に向かっていた。クニが腰を押さえていった。 「ずっと中腰で小便器を拭(ふ)いてるから、腰が痛くてたまんないや。あーあ、あと4日で地獄の罰(ばつ)もおしまいだ」
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